歯周外科/内科・ケモナイフセラピー
歯周外科とは
歯周ポケットという言葉を聞いたことがあると思います。
これはその名の通り、歯の周りにある歯根と歯肉の間にできたポケット状の隙間の事です。
初診の患者様の場合、レントゲン写真 口腔内写真 歯周ポケット測定を行います。 これらの検査により、歯周病の進行状態を把握し、治療計画を立てるのです。
歯ブラシ、歯石除去等を徹底して行い、再度歯周ポケット測定を行います。 その際、歯肉の形態や、元々の歯周病の進行具合により、改善しきれない場所が残ってしまいます。(歯周ポケットが4ミリ以上あると、歯石をとり残す確率が高くなるといわれています。)
この時に行うのが歯周外科処置のなかの、歯肉剥離掻把術です。 歯肉を剥離して 直接病巣を見える状態にして、奥深くに残っている歯石を徹底的に除去する方法です。 その際、歯周病により破壊せれて、不揃いになってしまった歯槽骨(歯を支える骨)の形態を整えます。
これが歯周外科の基本となります。
歯周外科処置の目的は、患者様の身体が治ろうとする力を最大限に引き出すために行う口腔環境の改善です。
これは歯周外科だけでなく、歯ブラシの練習や、フッ素塗布、むし歯の治療、根管治療すべてに当てはまることです。
病気を治すのは、患者様自身の身体であり、私たち歯科医は、その治癒力が発揮できやすい環境をできる限り整えるということしかできないのです。このことを治療と呼んでいるのです。治療とはいわば、治ろうとする力のお手伝い、治りやすい環境づくりでしかないのです。
そのお手伝いできるところの幅を広げ、より良い環境を作るために、私たち歯科医は、日々勉強し知識を高め、技術を磨いているのです。 歯周外科には、病巣部位の除去以外に、
- 深い歯周ポケットを浅くする
- 骨の形を整える(凸凹を修正したり、骨を再生したり)
- 歯ぐきの再生
- 審美性の獲得 など
の目的があります。
これらの目的を果たすために、場合によっては、人工骨や自家骨(患者様ご自身の骨)を使用したり、歯肉を切除したり、移植したり、様々な術式を選び行います。
再生療法とは
歯周病で失ってしまった骨を再生する方法です。
歯の周りにコラーゲンの膜を置き歯肉が入りこむのを阻止するGTR法
歯周組織の再生を促す薬剤(エムドゲイン)を塗布する方法、骨移植をする方法など
場合によってはこれらを組み合わせて行う場合もあります。
歯周形成外科とは
- 歯周病の進行により、歯茎の量が減り歯が長く見える
- 歯の長さが不ぞろいで見た目がかっこ悪い
- 歯を抜いたところだけ歯茎のボリュームが減ってしまい食べ物が挟まりやすい
- 空気が抜けてしまって話しにくい
など、健康な状態では起こりえなかったことが、歯周病により骨が破壊されたり、歯を失ったりすることで起こります。
これらの問題から、歯は物をかむだけのためになるのではないことがよくわかります。 大きなお口をあけて、おいしいものを食べながら、おしゃべりをしたり、笑ったり、するときに、健康できれいな歯と歯茎がとても重要な要素となるのです。 またご自身で行う毎日の歯ブラシがしやすいというのも大切な条件です。
不幸にもその健康な歯と歯茎を失ってしまった場合、再び美しく並んだ歯を手にいれるには、歯と歯茎、さらに顔貌、身体とのバランスが大切になります。 それを取り戻すための一手段として、歯周形成外科があるのです。
歯、歯茎の機能を有しながら、審美性も回復する。逆に言うと、高い審美性を実現しうる形態は、機能性に優れているということです。
きれいで、自然な色のセラミックの被せ物を作る際にも、健康でバランスのとれた形の歯ぐきに合わせてこそ、審美的といえる歯に仕上がるのです。
- 歯肉弁根尖側移動術 apically positioned flap APF
- 歯肉切除手術 gingivectomy
- 歯肉剥離掻把術 flap curettage
- 有茎歯肉弁移植 pedicle graft
- 遊離結合組織移植術 connective tissue auto-graft CTG
- 遊離歯肉自家移植 free gingival auto-graft FGG
など様々な外科手術に対応しております。
歯周内科とは
歯周病の治療は、外科的に悪くなっている原因を取り除くのが基本でした。
歯周病は感染症です。歯周病の原因菌の感染胃有効な抗菌薬を服用することにより
身体の中からしっかり治すことが出来る治療法です。
ただし薬を飲むだけだは、優れた効果は得られません。
しっかりとした歯ブラシは必須と考えます。
歯周病治療における最新化学療法
最新薬物療法 薬で斬る ケモナイフセラピーとは
この歯周内科と歯周外科のいいところを合わせた、治療法が、ケモナイフセラピーです。
- 治療期間が長い。
- 患者のモチベーションを保つのが難しい。
- 基本治療をまじめにやっているのに出血、排膿が止まらない。
- 重度歯周炎患者では歯周外科処置を行うことが不可能な症例が多数ある。
- 外科処置を行うことで抜歯を早めることさえある。
- 高齢化社会となり歯周外科が適応であっても、基礎疾患があり歯周外科が行えない患者も増えている。
- 歯周病が全身に大きな影響を与えることが明らかとなり、早期に歯周の状態を改善することが望まれる。
- 通常通りの歯周治療で歯肉縁下ポケット内細菌叢を安定した状態に作り上げられるかは疑問である。
- 歯周治療のスピード化
- 安定した歯周ポケット内細菌叢の確立
- 歯周外科以外での歯肉縁下のポケットコントロール
- ジスロマックSRは服薬コンプライアンスを守りやすい
- 1回の服用でおわり。
ケモナイフセラピーの詳細
歯周病の病因と治療に対する現在の概念は、細菌叢の時代と言われ歯周病原菌をすべて殺す必要はない。総菌数の中に歯周病原菌の占める割合を低くして安定した細菌叢を確立していこうというものである。すなわち安定した歯周ポケット内細菌叢は総細菌数に対する歯周病原菌の割合が低い。活動性の歯周ポケット内細菌叢は総菌数に占める歯周病原菌の割合が高いといえる。ではどうしたら細菌叢を変えられるのか。そこでアジスロマイシンを併用したFull Mouth SRP を考案した。機械的プラークコントロール(SRP)と薬物療法(経口抗菌薬)を併用し短期間に歯周病原細菌を口腔から排除し安定した細菌叢を構築するというものである。短時間に治療することにより、ブロックごとに分けたSRPの時に見られるような、治療した部位への未治療部位からの感染を防ぐ目的がある。
これに用いられる抗菌薬の所要性質には歯周病関連細菌に対して十分な抗菌力を持つ、(ターゲット局所に効率よく有効濃度が得られる。歯肉溝浸出液中へ高濃度の移行、歯肉組織移行性が高い、炎症部位に特異的に蓄積) 作用時間が長いこと、があげられる。
これらの性質に合致するのがアジスロマイシン(ジスロマック)である。従来のマクロライド系抗菌薬に比べるとグラム陰性菌(歯周病原菌)に対して抗菌活性が増強している。また歯肉組織移行性に優れている。そして食細胞(マクロファージ、好中球)に取り込まれ炎症の強い部位すなわち感染組織へ薬物が移送される。
TBI SC を行いベースラインを作ってからアジスロマイシンを投与(3日間)後四日目に全顎SRPを行う。(一〇日以内に全顎SRPをすれば1日で行った時と同じ効果が得られる) ジスロマックは抗菌作用だけではなく、コラーゲン合成抑制 コラーゲン分解作用 バイオフィルム形成阻害 バイオフィルム分解作用 好中球走化作用 が相乗的に作用していく。
薬で斬るケモナイフセラピー Chemo-Knife 薬剤の特性を利用して歯肉を外科処置をすることなく歯肉をさげてポケットを少なくする。
術式 プラークコントロールの確立と歯肉縁上のSC→確実な浸潤麻酔(歯肉頬移行部)→超音波スケーラー(ほぼマックスの強さ)にて縁下歯石の除去→グレーシーキュレットにてSRP→その後もう一度超音波スケーラーで洗い流す→トゥースプレーニングバー(東京歯材社)にて根面の滑沢化を行うとともに内縁上皮を少しとることにより意図的に炎症を起こしジスロマックが奏功することを期待している。 痛み止めの投与。その日は軽く歯ブラシ。翌日から通常通りの歯ブラシをしてもらう。1~2週に一度来院してもらいPMTCをしながら経過観察。
適応 侵襲性歯周炎
中等度以上の慢性歯周炎
難治性歯周炎
実際に患者様へのこの治療法を適応したところ、短期間に劇的な改善が認められた。
ただし、短期間の改善に伴い、知覚過敏(冷たいものがしみる)が出てしまう場合もありました。
保険の範疇から外れる治療であるため、保険外の治療となり自費治療となります。