歯周病と戦う歯医者さん
秩父市相生町 落合歯科医院
歯科衛生士の大島一恵です
歯周病が細菌による感染症だとご理解いただけると、
『それなら殺菌剤で治せるのでは?』と、歯科医院に行かず歯周病予防に効く歯磨き剤などを使って、自分で頑張って歯周病を治そうとする方が時々おられます。
現在は、たしかに優れた殺菌剤や抗炎症剤などの薬用成分の配合された歯磨き剤が数多く販売されています。しかし歯周ポケットのなかに歯ブラシの毛先が届くのはわずか2㍉ほど。歯周病の患者さんの歯周ポケットは、軽度の歯周炎でも3㍉ほどになります。歯ぐきのなかに長く汚れが溜まっていると、歯石が付き、プラークも成熟して頑固な細菌の巣に変わっているので、殺菌剤などが効きにくいのが現実です。
細菌のかたまりであるプラークがお口のなかで熟成すると、いろいろな種類の細菌が集まったバイオフィルムという細菌の共同体になります。その表面は菌体外多糖という膜で覆われ、殺菌剤や白血球などはこの膜の中には染み込むことができないため、思うような効果がありません。
そこで威力を発揮するのが歯科医院でのスケーリングです。スケーリングでバイオフィルムを歯石ごとゴッソリ取り去ると、炎症の原因を大幅に除去することができます。
じつはスケーリングにはもうひとつ、重要な意味があります。空気に触れたとたんに死んでしまう嫌気性細菌の歯周病菌にとって、歯ぐきの奥までかき回され、空気を送り込まれることは致命的。これで、スケーリングのあとも歯周ポケットの奥にしつこく残る歯周病菌に大きなダメージを与えます。
こうしておいて歯周ポケットに殺菌剤を送り込めば、薬剤は本来のすぐれた効き目を発揮し、弱った歯周病菌をさらに叩くことができます。殺菌剤の入った歯磨き剤で毎日丁寧に歯磨きをすれば、歯周病菌の再増殖の予防の効果的です。
次回は、パクチー好き仲間の衛生士の武藤より『歯周病治療は誤嚥性肺炎のの予防にも効果的』についてお伝えいたします。